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【書評】ハーバードビジネスレビュー版・ブロックチェーンの衝撃

ブロックチェーン元年と言われる今年、ブロックチェーンに関する書籍を片っ端から読んでいます。そんな中手に取ったのがこちら。

 

ビジネスサイドからのブロックチェーンの特集は珍しいので、久しぶりにハーバードビジネスレビューを読んでみました。この雑誌については毎回読んでいる訳でないのですが、年に2〜3日程度関心のあるテーマがあれば購読しています。

 

特集のテーマは「ブロックチェーンの衝撃」で、以下のコンテンツから構成されています。

  1. ブロックチェーンの活路は人工知能との連携にあり(北野宏明)
  2. ブロックチェーンビットコインを動かす技術の未来(鳩貝淳一郎)
  3. 仮想通貨に「信頼」は成立するのか(岡田仁志)
  4. ブロックチェーンと企業戦略(マルコ・イアンシティ、カリム R.ラカニー)
  5. Fintechで勝ち残る企業の条件(林野宏)

 

特に有用だったのが、上記2、4、5の記事。今後企業がブロックチェーンの導入を図る上で参考になります。

 

以下気になった部分をまとめてみます。

 

ブロックチェーン技術の適用が試みられている領域

ブロックチェーンの適用領域でよく言及されるのが、

といった例が多いですが、2つほど興味深い観点がありました。予測市場とシェアリングエコノミーへの適用です。

 

予測市場への応用

これまでのブックメーカーは、予測の対象となるイベントを立て、イベントが起こるまでの間に参加者が何にどれだけ賭けたというデータを管理し、自身が認定したイベント結果に基づき清算を行ってきた。これに対して、分散型の予測市場では、まず、任意の参加者が予測の対象となるイベントをブロックチェーンに登録する。その後、当該イベントに誰がどれだけ賭けたかに関する情報がブロックチェーンに記録される。

 

シェアリングエコノミーへの応用

ユーザが利用料金を払うと、ブロックチェーン上のスマートコントラクトにいより自動車へのアクセス権が付与される。ユーザが利用可能な時間帯に車の前に立つと、車からブロックチェーンに照会がかけられ、認定されるとロックが解かれる。

特に後者の、ブロックチェーンが、IoTにおける「デバイスと人」、「デバイスとデバイス」をつなぐ技術という切り口が勉強になりました。

 

基盤技術の定着パターン

次に、企業がブロックチェーンのような基盤技術を導入するにあたっては、定着パターンを理解した戦略が必要だという記事が秀逸でした。

 

インターネットとTCP/IPの関係を例にとり、TCP/IPが接続コストを劇的に下げることで新たな経済価値を生み出したことを引き合いにして、ブロックチェーンも同様に取引コストを劇的に下げる可能性があるとしています。

 

すぐにはブロックチェーンが普及しないものの、ブロックチェーンが定着するまでのパターンを4つのセグメントで整理されていて、今後企業が導入を検討するにあたりこのフレームが役に立ちます。

  1. 単体での利用(例:ビットコイン
  2. 局地的な利用(例:金融取引に使う非公開型オンライン台帳)
  3. 代替的な利用(例:ビットコインを使った小売業者の商品券)
  4. 革新的な利用(スマートコントラクト)

 

なお、上記4つのセグメントは、

  • 斬新さ:世界的にどれほど目新しいか
  • 複雑さ:エコシステムを形成するのに必要な調整の難易度

の2つの要素で構成されており、詳しくは本紙のp79を見てみてください。

 

まとめ

Amazonにレビューがなかったので、今回自分が役に立った部分を駆け足でまとめてみました。ハーバードビジネスレビューは高いので、購入に尻込みしている方で、本記事で気になる箇所があれば是非手にとってみてください。視座の高い視点を得られるだけでなく、経済誌とは思えないほどブロックやマイニングの仕組みといった技術的な細かい点まで解説されています。しかも図が非常にわかりやすく、技術者観点でもブロックチェーンに対する理解が深まります。

 

今回の特集記事のタイトルは「ブロックチェーンの衝撃」ですが、一般的にはこちらの方が有名ですね。こちらの本も朝山さんなど著名な方が執筆されており非常に勉強になります。